異色作家短編集の第4巻である,リチャード・マシスン著「13のショック」(早川書房)を読んだ。

リチャード・マシスンは,私が子供のころからとても気になっていた作家である。
中学生や高校生だったころは,お小遣いで買うことができる本の数が限られていたので,私の場合,早川書房や東京創元社の目録を書店からもらってきて,その目録の内容をかなり詳しく読んでいた。
目録を読んで判断する限り,リチャード・マシスンは大変気になる存在であった。
目録で紹介されていたリチャード・マシスン作品というのは,例えば
自動車で白昼のハイウェイを走行中,たまたま追い越した大型トレーラーにつけ回され,殺害されそうになる平凡な男の恐怖を描く「激突!」
や
吸血病のまん延により,周囲の全ての人間が吸血鬼になってしまった男の孤独と恐怖を描く「地球最後の男」
や
原因不明の理由により1日に7分の1インチずつ体が縮み始め,無に帰してしまいそうになる男の恐怖を描く「縮みゆく人間」
である。
どれも理不尽な恐怖に直面した人を描いた作品であり,目録に書かれたその4行ほどのあらすじを読んだだけで,どんな作品なのだろうかと私はあれこれ想像してしまっていた。
それ以来,私にとって,リチャード・マシスンはずっと気にかかっていた作家であり,現在絶版になっている「縮みゆく人間」は未読であるが,「激突!」や「地球最後の男」は購入して読んでみた。
そして,それはやはり期待に違わぬ作品であった。
そのリチャード・マシスンの短編集が,この「
13のショック」なのである。
この「13のショック」には,表題どおり13編の短編が収められている。
その中で私にとって特に興味深かった作品を2つ挙げるとすれば,「人生モンタージュ」と「陰謀者の群れ」であろう。
「人生モンタージュ」は,ある映画を観た作家志望の男の感想から始まる。
ここからは,ネタバレの要素があるので一部黒い文字で書くが,この男は,自分が作家として成功するための努力を10年以上もの間続けているのに,映画の登場人物の同様の努力がわずか2分間ないし3分間の描写で描かれていることに不満を覚える。
すなわち,映画のように簡単に時が過ぎればいいのに・・・と。
そして,この男の人生が描かれるのであるが,これがまさに秀逸であると思う。
最初,ずいぶん省略の多い下手くそな文章を読んでいるような気になるが,それが,決してそうではないことに間もなく気付かされる。
これは,ある意味で本当に恐ろしい作品である。
すべての瞬間を大切に生きたいという気持ちを改めて思い起こさせられた。
「陰謀者の群れ」は,また別の意味で大変恐ろしい。
周囲から嫌がらせを受け,迫害される男の思考と行動。
まとめてしまえばそれだけなのだが,これが極めてうまく描かれている。
ネタバレも何もあったものではないのだが,リチャード・マシスンならではの作品であると言えよう。
この作品の詳細は,読んでもらうほかない。
この短編集中のほかの作品も,知っていそうで知らない世界(?)に踏み込んでしまった男を描いた「次元断層」,ロサンゼルスが世界中に拡大していく(?)「忍び寄る恐怖」,自らの死を目撃した(?)男たちの葛藤を描く「死の宇宙船」など粒ぞろいであり,どこか狂った世界を描かせるとリチャード・マシスンは本当に光っている。
これこそ異色作家と言うべきであろう。
リチャード・マシスンは,すごいと思う。
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