クレアが死んでいる
87分署シリーズを読む(14)
エド・マクベイン著「クレアが死んでいる」(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読んだ。
87分署シリーズの第14作目の作品である。
この作品は,昔,エド・マクベイン作品について早川書房の目録を見たころから気になっていた作品であった。
何しろ,87分署の刑事たちの一人であるバート・クリングの恋人クレア・タウンゼントの死が表題になっているのである。
リアルと言えばリアルなのかもしれないが,2作目から登場させていたレギュラーのキャラクターをあっさり殺してしまうところが,エド・マクベインの思い切りの良さだと思う。
もちろん,だれが死んでも殺人事件は殺人事件であり,その悲惨さに変わりはないが,その生前のありようを知っていればこそ,その悲惨さが身近に感じられることは間違いない。
銃の乱射による殺人事件の現場に行き,恋人が被害者となったことを知って,衝撃のあまり絶句するバート・クリング刑事。
そして,彼の気持ちに思いを致して心を痛め,犯人逮捕に向けて,必死の捜査に臨む87分署の刑事たち。
その心持ちを想像するとそれだけでやり切れない感じがする。
そこがまさに読みどころなのだろう。
著者エド・マクベインのねらいどおりである。
エド・マクベインは,刑事たちについて言う。
「彼らは血の古い儀式に深く関係した連中なのだ。」
期待通りのやり切れなさや衝撃を感じさせてくれたので,読み物としてはよくできていたと思う。
ただ,これは,推理小説としての読みどころは乏しい作品だと思った。
そういう面には主眼がないのかもしれないが。
この作品も,火曜サスペンス劇場で映像化されたことがあり,そのときのサブタイトルは
わが町VII「日本語学校の教師,風俗の女,だったらしい。
恐喝者-焼殺された刑事の恋人は複数の顔を持つ女」
なんだか違う作品になってしまっているような気がする。
また,この作品を翻案した映画として,市川崑監督「幸福」(1981年)という作品もあるらしい。
これも未見であるので,機会があれば鑑賞してみたい。


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