2007.01.26

ぼくは,犬神だの蛇神だの,大嫌いだ

 現在,映画「犬神家の一族」が公開されている。
 この作品は,もちろん横溝正史の著書「犬神家の一族」を映画化した作品なのであるが,どうもこの表題を聞くと私はある話を思い出して笑ってしまう。
 その話というのは,どこかで横溝正史が書いていたエピソードである。
 うろ覚えなので言葉の端々ははっきりしないが,概ね次のようなエピソードであった。

 横溝正史が,新作「犬神家の一族」を雑誌に連載することが決まり,そのことが発表されたころのことらしい。
 あるとき江戸川乱歩が横溝正史に会ったとき

 きみ,今度,「犬神家の一族」というのを連載するらしいね
 ぼくは,犬神だの蛇神だの,大嫌いだ
と言った。
 乱歩先生,独自の切り口からの言いがかりである。(笑)
 そのとき,横溝正史は,乱歩に対し
 いやいや,乱歩さん,ぼくの作品には犬神も蛇神も出てきません
 ある一族が出てくる物語なのですが,「田中家の一族」とか「山田家の一族」と言っても平凡な感じがするから,ここはひとつ鬼面驚かしたろうと思って,「犬神家の一族」ということにしたんですよ
と説明した。
 横溝先生の表題の決め方もなかなか安易である。(笑)
 たしかに「田中家の一族」では迫力がないけれど
 しかし,その答えを聞いた後も,乱歩先生は
 いや,でもやっぱりぼくは,犬神だの蛇神だの,大嫌いだ
と言い続け,横溝先生は困ったらしい。
 しかし,そもそもこの二人の話はかみ合っていないのではなかろうか。(笑)

 そのエピソードを読んで以来,私は,「犬神家の一族」と聞くと,日本の推理小説界を代表するこの二大巨頭のとんちんかんなやり取りが思い出されて笑ってしまうのである。

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2006.10.16

デスノート終了

 前に書いたように注目していた漫画「デスノート」の最終巻が7月に出版されていたので,買って読んでみた。
 かなりミステリ的な趣味あふれる漫画であると思うのだが,最初のころのおもしろさから比べてみると,後半はかなり場当たり的な展開が目立ったような気がする。
 最終回も,ずいぶんあっさりしたものであった。

 やはり,週刊漫画誌のコミックに長編ミステリ的な作品はなかなか合わないのかもしれない。
 週刊漫画誌に連載される作品は,通常人気が低落するとなんらかのてこ入れを行い,それでもどうにもならなければ打ち切りが行われるのが一般的だと聞いている。
 逆に人気がある限りは続けるということにもなりがちであるらしい。
 アメリカのテレビドラマなども似たような傾向があるようで,たいていの作品は,最後は人気がなくなってうやむやのうちに終わるような傾向が見られるような気がする。
 この種の形態のメディアの場合,長編ミステリのように最終回を見据えた大掛かりなトリックをしかけるのは大変難しいのだろうと思う。
 長編ミステリ的な趣のある作品は作りにくいはずである。

 デスノートに関しても,出だしがなかなかおもしろかっただけに,なんとなく残念である。

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2004.12.04

ナイル殺人事件(ル・テアトル銀座)

 ル・テアトル銀座で演じられている「ナイル殺人事件」の平成16年11月20日午後1時からの回を見てきた。

 アガサ・クリスティー著「ナイルに死す」を,クリスティー自身が舞台用に書き直したものをもとにしているらしい。
 主な筋書きは「ナイルに死す」と同じであるが,エルキュール・ポワロは出てこない。

 私は,芝居を観た経験はあまりないのであるが,大変楽しめた。
 かなりネタバレになるので黒い文字で書くが,原作と同様に,犯行に及んだサイモンをたまたま目撃したメイドのルイーズが

 私はだれも見ていない
という趣旨の供述をしながら,言外に見ていることを匂わせてサイモンを脅迫する場面や,サイモンがそれに対して
 君のことはちゃんとぼくが面倒をみる
などと言って,ルイーズに真相を供述させないようにする場面
などは大変おもしろかった。
 クリスティーの作品はもともとそういう傾向が顕著だが,この作品でも上記のように巧みなやり方で言葉に二重の意味を持たせている
 そんな二重の意味を持つ微妙な言葉を発する時の役者さんたちの意味ありげな視線や演技が非常に良かった。
 特に,当然,鍵になる人物である,サイモン,ジャクリーヌ,ルイーズ辺りの演技には見せ場が多かった。
 例えば,原作の小説とはやや違うが
 サイモンが,ジャクリーヌのいる場で,ルイーズが"犯人"を目撃したらしいことを話し,「ルイーズに真実を話させるために金を払おう」と提案する場面
 その後,サイモンがもう一丁のけん銃のことを話し,その直後にジャクリーヌが黙ったままそっと舞台の外に退出する場面
などは,真相を知らない人にとってはなんということもない場面に見えるかもしれないが,真相を知っていると大変意味深な場面に見えるのである。
 このおもしろさは,なかなか語り尽くせない。
 この芝居については,真相を知らずに見に行った客がいるとすれば気の毒でしようがない

 ミステリの芝居というのもおもしろいものだと思った。
 平成17年2月にあるらしい「そして誰もいなくなった」も見てみたくなってきた。

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2004.04.26

コナン・ドイルの呪い

 シャーロキアンが謎の死を遂げたらしい。
 この記事によると,亡くなったのはグリーン氏という人で

 グリーン氏は3月27日、自宅ベッドで靴ひもで首を絞められ、玩具に囲まれた死体となって発見された
 靴ひもを締め付けるのに木製のスプーンが使われていた
とのことである。
 殺人,自殺,事故死のいずれに決める証拠も十分でないと報じられているが,首を靴ひもでまいてそれを木製のスプーンで締めつけるような事故や自殺が起こり得るのだろうか。
 自殺と言ったって,命をかけた自作自演ではあるまいし。
 この文面ではどういう状況なのか詳細はよくわからないが,確かに不思議な雰囲気である。

 こういう事件こそシャーロック・ホームズ向きである。
 とにかく,まず,ありえない仮説を取り除いていき,残ったのがどんなにありそうにないことでも真実に違いないというほかない。

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