ぼくは,犬神だの蛇神だの,大嫌いだ
現在,映画「犬神家の一族」が公開されている。
この作品は,もちろん横溝正史の著書「犬神家の一族」を映画化した作品なのであるが,どうもこの表題を聞くと私はある話を思い出して笑ってしまう。
その話というのは,どこかで横溝正史が書いていたエピソードである。
うろ覚えなので言葉の端々ははっきりしないが,概ね次のようなエピソードであった。
横溝正史が,新作「犬神家の一族」を雑誌に連載することが決まり,そのことが発表されたころのことらしい。
あるとき江戸川乱歩が横溝正史に会ったとき
きみ,今度,「犬神家の一族」というのを連載するらしいねと言った。
ぼくは,犬神だの蛇神だの,大嫌いだ
乱歩先生,独自の切り口からの言いがかりである。(笑)
そのとき,横溝正史は,乱歩に対し
いやいや,乱歩さん,ぼくの作品には犬神も蛇神も出てきませんと説明した。
ある一族が出てくる物語なのですが,「田中家の一族」とか「山田家の一族」と言っても平凡な感じがするから,ここはひとつ鬼面驚かしたろうと思って,「犬神家の一族」ということにしたんですよ
横溝先生の表題の決め方もなかなか安易である。(笑)
たしかに「田中家の一族」では迫力がないけれど。
しかし,その答えを聞いた後も,乱歩先生は
いや,でもやっぱりぼくは,犬神だの蛇神だの,大嫌いだと言い続け,横溝先生は困ったらしい。
しかし,そもそもこの二人の話はかみ合っていないのではなかろうか。(笑)
そのエピソードを読んで以来,私は,「犬神家の一族」と聞くと,日本の推理小説界を代表するこの二大巨頭のとんちんかんなやり取りが思い出されて笑ってしまうのである。

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