おしどり探偵・完全版

 おすすめトミーとタペンス(20)

 アガサ・クリスティー作品のうち,トミーとタペンスが主人公を務める英国のテレビドラマのDVDの輸入版が安価に入手できることは,ずいぶん前に書いたことがある
 その当時,ずいぶん悩んだ末,そのDVDを購入したのであるが,今となってはそのことがまた悩みの種になっている。

 購入した輸入版は,日本語の音声や字幕はもちろんのこと,英語の字幕もないものであり,英国で放送時そのままと思われるDVDなのであるが,その後,日本語の音声,字幕に加えて英語の字幕まで備えた完全版がDVDボックスとして発売されたのである。
 これは大変魅力的なDVDであるので,これからトミーとタペンスのDVDを買おうとする人は,これを買うといいと思う。

 かなりほしい気もするけれど,私は輸入版を持っているのでちゅうちょしてしまう。

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「親指のうずき」への疑問

 おすすめトミーとタペンス(19)

 先日,トミーとタペンスが活躍する「親指のうずき」を再読したが,個人的には,読後やや割り切れなさが残った。
 以下,ネタバレなので黒い文字で書く。

 そもそもよく分からないのは,ランカスター夫人がタペンスに対して,最初に「あれは,あなたのお子さんでしたの?」という発言をしたのは,一体何のためだったのかということである。
 もし,ランカスター夫人が,タペンスのことを自分が殺した子供の母親だと思ったとしても,そのことをタペンスに問う必然性があまりないように思われるのである。
 それに,ランカスター夫人は,「あれは,あそこにあるんですよ。暖炉の奥に。」と言っていたが,そこに子供の人形が落ちていて,その胴体の中に盗まれたダイヤモンドが詰まっていたこともつながりが今ひとつわからない。
 ランカスター夫人が,タペンスのことを自分が殺した子供の母親だと思ったとしても,宝石のことをタペンスに話す必然性がないし,宝石のことでなく子供の死体のことを話そうとしたのであれば,なぜその場所に宝石の入った子供の人形が画されていたのかということもよく分からない。
 全体として,真相が分かった後も,なんだか支離滅裂な印象を受けるのである。

 この「親指のうずき」の絵解きについて解説しているサイトがないかと思って探したけれども,それも見つからない。
 だれか,この作品について解説してくれませんかね。

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アガサ・クリスティーの「奥様は名探偵」

 おすすめトミーとタペンス(18)

 現在,シネスイッチ銀座で,映画「アガサ・クリスティーの奥様は名探偵」が公開されている。
 これは「親指のうずき」の映画化作品なのであるが,わざわざ邦題に「アガサ・クリスティーの」とつけられているところが,なかなか考えさせられる。
 やはり,「親指のうずき」自体の作品として知名度が十分でないため,集客のためにアガサ・クリスティーの知名度を利用したのであろう。
 シネスイッチ銀座での公開は,平成18年10月20日までであるとのことだったので,私は,平成18年10月9日にこの映画を見に行った。

 この映画では,舞台がフランスになって登場人物の名前がそれぞれフランス風になっていた。
 タペンスの本名は,本来,プルーデンス・ベレズフォードなのであるが,この映画ではプリュダンス・ベレスフォルドである。
 舞台がフランスの風光明媚な地域に改められているので,背景の景色が素晴らしかった。
 トミーとタペンスの物語は,夫婦の息の合った会話と喜劇風の味付けが持ち味だと思うのであるが,そういう意味ではなかなか興味深い映画であった。
 ストーリーは原作準拠であり,下手な改変がされていなかったのも良かったと思う。

 ただ,後半の展開と真相に至る説明は,原作を知らない人が1回見ただけで分かるのかどうか,私としては大変疑問だと思った
 私は,原作自体を読んだときも,あまり納得できない部分が残ったくらいなので,どうにも難しい映画になってしまったと思う。
 そもそも,「親指のうずき」は,あまり映画化に適した作品であるようには思えないのだけれど。

 とりあえず,熱心なクリスティーファンで原作をしっかり読み込んだ人にだけお勧めできる映画である
 言い換えれば,クリスティー原作の映像作品は見逃したくないという人だけ,見ればいいと思う。

(10/14追記)
 この映画については,「思考だだもれ」の零時さんが表題に関して

 え,それはトミーがかわいそう
という感想を書かれている
 それは,そのとおりですね。
 夫婦ともに主人公のはずなのに・・・。(笑)

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親指のうずき

 おすすめトミーとタペンス(17)

 アガサ・クリスティーが書いたトミーとタペンスのシリーズ4作目は,「親指のうずき」(ハヤカワ・クリスティー文庫)である。
 この作品に関しても早川書房が翻訳権を独占しているため,訳本はこの1冊だけであり,迷うことはない。
 最近,この「親指のうずき」を再読した。

 この時代になると,トミーとタペンスは既に初老の夫婦となっている。
 「にんじん頭」こと赤毛のトミー・ベレズフォードも,髪の色が砂色がかった灰色となったなどと書かれている。
 このような年齢になりながらも,トミーとタペンスの会話は若いころと変わらないのが大変ほほえましい。

 トミーの叔母さんを養老院に訪ねたところ,その養老院に入っていたランカスター夫人なる老婦人がタペンスにいきなり妙なことを話しかける。

 あれはあなたのお子さんでしたの?
 あれは,あそこにあるんですよ。
 暖炉の奥に。
 やや認知症気味の老人のたわごとなのか,それとも何か深い意味があるのか・・・。
 タペンスが再び養老院を訪ねた際,ランカスター夫人は慌しく親せきの者に引き取られた後であり,タペンスの懸命の努力によってもランカスター夫人はどこに行ったのか,その行方は全く知れなかった・・・。
 何ゆえに,そしてだれに,ランカスター夫人は連れ去られたのか・・・。
 ランカスター夫人が口走った何かがだれかの危機感をあおり,ランカスター夫人を連れ去らせることになったのか・・・。
 不安を感じたタペンスは,独りなぞを追い始める・・・。

 大ざっぱに言えばこのようなストーリーであり,ランカスター夫人がタペンスに対して口走った妙なせりふが暗示する恐ろしい背景を読者に想像させ,惹きつけつつ,物語を展開していくクリスティーの手際は素晴らしいと思う。
 後期クリスティーお得意の,「過去の事件を探る」タイプの物語である。
 ただ,個人的には,この最後の絵解きは,あまり十分なものとは思われない。
 話の引っ張り方がうまいだけに,最後に十分得心できないところが惜しいと思うのである。
 そのことについては,また,別の機会に述べることとする。

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講談調・おしどり探偵

 おすすめトミーとタペンス(16)

 少し前に買った,アガサ・クリスティー著(坂口玲子訳)「おしどり探偵」(ハヤカワ・クリスティー文庫)を読んだ。
 以前,橋本訳で2回,一ノ瀬訳で1回読んでいるので,通読するのは4度目であった。

 新訳である坂口訳は,とにかく体言止めが目立っていた。
 前に書いた一ノ瀬訳の違和感のような不都合はなく,こなれた言葉になっているように思ったのであるが,全体的に気のせいか体言止めが多いように感じ,そこが少し気になった。
 私は,「講談」というものをよく知っているわけではないが,読んでいた際の印象は「講談調・おしどり探偵」というほかなかった。
 もともとコミカルな話だからこれでもいいのかもしれないが,私の個人的な好みでは橋本訳の方が良かった。
 もっとも,私は,単に最初に読んだものに引きずられているだけかもしれないと思う。

 それにしても何度も読んでもこの作品はおもしろい。

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NかMか

 おすすめトミーとタペンス(15)

 アガサ・クリスティーが書いたトミーとタペンスのシリーズの3作目は,「NかMか」(ハヤカワ・クリスティー文庫)である。
 この前までとりあげていた「おしどり探偵」には手に入れやすい訳本が複数あるため,どちらを選ぶべきかという問題があったのであるが,「NかMか」以降は早川書房が日本語版翻訳権を独占しているため,良くも悪くも迷う余地はない。

 ここまでとりあげてきた「秘密機関」と「おしどり探偵」では,トミーとタペンスは若いカップルというイメージであった。
 ところが,「NかMか」は読み始めてすぐにそれとは雰囲気が違っていることがわかる。

 時は1940年,ドイツと戦争状態にあるイギリスである。
 かつて「秘密機関」の時代には国家の危機を救う大活躍をしたトミーとタペンスが,これほどの時代に黙っているはずがないではないか。
 何か国の役に立ちたいと思って仕事を探すトミーであるが・・・。

タ「さあさあ,すっかり白状なさいな。仕事はなかったの?」
ト「なにもない。ぜんぜんお呼びじゃないのさ。なあ,タペンス,人間わずか46歳で,よぼよぼの爺さん扱いされるなんて,癪にさわる話じゃないか。陸軍,海軍,空軍,外務省,どれも口裏をあわせたように同じことを言う。あんたは年をとりすぎている。いずれそのうちお願いする事があるかもしれません,ってね」
 なんと,トミーは既に46歳なのである
 しかも老いぼれ扱いされて仕事がない
 タペンスも似たようなものである
 憤り,涙をこらえるタペンス。
 時とはなんとむごいものか。

 そう思わせておいて,実はもちろんこんなことで終わるトミーとタペンスではない。
 ドイツの大物スパイ「N」又は「M」を向こうに回す大活躍がここから始まるのである。
 特に年を重ねてなお衰えることのないタペンスの機知と行動力には驚かされる。
 そう,人は年をとっても変わらない。
 見た目は年を重ねてもトミーはトミーだし,タペンスはタペンスなのである。
 あの若いころのトミーとタペンスがここにいる,そう思わせてくれる楽しい冒険スリラー的作品だと思う。

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The Crackler and Other Stories

 おすすめトミーとタペンス(14)

 ずいぶん長くなってきたが,アガサ・クリスティー著「おしどり探偵」(ハヤカワ・クリスティー文庫)について,もう一つ書くことにする。

 最近,"Partners in Crime"のカセットテープというものを買ってみた。
 朗読しているのが,映像作品でトミーを演じたジェームズ・ワーウィックであるし,こういうものもおもしろいかもしれないと思ったのだ。
 この種のカセットテープやCDは元の作品を要約したものもあるようであるが,届けられたものには,"unabridged"の表示があった。
 Amazon.co.jpでは,この表紙が表示されているが,実際に届けられた物は,HarperCollinsのサイトで紹介されているこれだった。
 Amazon.co.jpの紹介では内容がはっきり書かれていないが,短編集"Partners in Crime"の中ほどにある

The Case of the Missing Lady
Blindman's Buff
The Man in the Mist
The Sunnigdale Mystery
The Crackler
の5作品(カセットテープ2巻,約3時間分)であった。
 このカセットテープのシリーズは,"Partners in Crime"全体を3巻に分けて収録しているようであるが,これはその第2巻であり,コメディとしてもパロディとしても聞きどころだと思うのでなかなかよろしい。
 私のように英語が苦手な人が,ペイパーバックで字を追いながら勉強をかねて聞くにはちょうどいいのではなかろうか。

 なお,Amazon.co.jpでは第3巻も販売されているようだが,HarperCollinsのサイトでも紹介されている第1巻は,なぜか見当たらない。

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輸入盤DVD "Partners in Crime"

 おすすめトミーとタペンス(13)

 前に書いたジェームズ・ワーウィックとフランセスカ・アニスの「おしどり探偵」(「二人で探偵を」)については,日本クラウン株式会社からVHSビデオで発売されている
 しかし,これは全10巻で1巻あたり3150円という非常に手が出にくい価格設定になっている。
 私は,以前に書いたようにLaLaTVで放送された際に録画した日本語版で見たのであるが,これから見たいと思う人がいても映像ソフトの入手に困難を伴うことになろう

 同じことは他の作品についても言える。
 ジェームズ・ワーウィックとフランセスカ・アニスの二人が,それぞれトミーとタペンスの役を演じて,「秘密機関」も映像作品化されているはずなのであるが,これは私も見たことがない。
 この「秘密機関」もVHSビデオで発売されているのであるが,価格が6300円と言われるとちゅうちょしてしまう。
 そのほか,冒険スリラー系統のクリスティー作品を映像化した「七つの時計」は7350円であり,「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」 に至っては10500円もする。
 しかも,どれも今どきDVDではなくVHSビデオなのである。

 解決方法がないわけではない。
 実は,英米では既にこれらの作品はDVD化されているのである。
 日本のAmazon.co.jpでも

Tommy & Tuppence: Partners in Crime Set 1 (2pc) [IMPORT]
Tommy & Tuppence: Partners in Crime Set 2 (2pc) [IMPORT]
が販売されており,合わせて9222円という低価格なのである。
 Amazon.co.jpでは収録内容が十分わからないのでAmazon.comで検索すると,Set1には「秘密機関」と「おしどり探偵」の4エピソードが,Set2には,「おしどり探偵」の6エピソードが収録されていることがわかる。
 日本で発売されているVHSでこれをすべてそろえると3万7800円なのであるから,かなりお買い得である。
 同様に
Seven Dials Mystery (2pc) [IMPORT]
Why Didn't They Ask Evans [IMPORT]
の2作品も,それぞれ2881円,3458円という格安の価格で輸入盤DVDが発売されている。
 ただ,日本語の吹替え・字幕がないことと,リージョンコードが違うため日本で売られている普通のDVDプレイヤーではそのまま再生できないことが問題であろう。
 私のDVDプレイヤーはリージョンフリー化が簡単にできるようなので,英語に自信があればこれらのDVDを買うところなのであるが,そこに自信がないので未だに手を出せずにいる。

 名探偵ポワロやミス・マープルのように,日本でもDVD化してほしいところである。

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ジェームス・ワーウィックとフランセスカ・アニス

 おすすめトミーとタペンス(12)

 アガサ・クリスティー著「おしどり探偵」は,1980年代にイギリスで映像作品化されている。
 前に,oriori氏が指摘した「二人で探偵を」がそれである。
 昨年,LaLaTVで放送されたので,私は,人に頼んで録画してもらい,全10話を鑑賞した。
 そこで主役を演じているのが,ジェームス・ワーウィックとフランセスカ・アニスの二人なのである。

 oriori氏がお洒落なイメージと表現しているのは,適切な表現だと思う。
 アールデコ調の雰囲気や,タペンスのファッション(特に,やはり帽子か)を映像として見ることができる大変楽しい作品であり,原作にもある程度忠実な作りになっているので,おすすめできる映像作品だと思う。
 ただ,小説の「おしどり探偵」のような大がかりな背景のストーリーがなかったり,読んだ人ならわかると思うがあの中の罪のないアリバイ崩し作品がかなり改変されていたりしたのが,個人的には少し残念であったが。

 ジェームス・ワーウィックとフランセスカ・アニスのペアはこの作品でトミーとタペンスを演じているほか,ボビーとフランキーも演じている。
 ボビーとフランキーというのは,アガサ・クリスティー著「なぜ,エヴァンズに頼まなかったのか?」に登場する二人であり,この作品も映像作品化されているのである。
 この「なぜ,エヴァンズに頼まなかったのか?」は,アガサ・クリスティーの数ある冒険スリラーのかなりおもしろい方だと思う。
 実は,私としては,「七つの時計」「なぜ,エヴァンズに頼まなかったのか?」の2作品がこの系統での最もお気に入りの作品なのであるが,そのことは,また別の機会に書くことにする。

 話は戻って,ジェームス・ワーウィックとフランセスカ・アニスの"Partners in Crime"であるが,この作品を現在見るためには,どのような方法があるかという点になると,やや悩ましい問題がある。
 これについては,次回書くことにしようと思う。

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新訳・おしどり探偵

 おすすめトミーとタペンス(11)

 様々な探偵になりきり,おしどり夫婦大活躍!
 ユニークな探偵事務所の顛末を新訳で贈る

 ハヤカワ・クリスティー文庫から,アガサ・クリスティー著「おしどり探偵」が新訳で発売された。
 見事なタイミングである。
 今なら本屋で平積みの「おしどり探偵」を見ることができる。
 冒頭の宣伝文句が書かれた緑色の帯が目印である。

 今回出版された新訳は坂口玲子女史の翻訳である。
 せっかくだから,この新訳「おしどり探偵」も比較のために読んでみようと考えて買ってきたが,まだ通読していないのでなんとも言えない。
 ただ,気になるところをいくつか拾い読みした限りでは,前に書いた一ノ瀬訳ではしっくりこないところは無難な訳になっているし,橋本訳のやや硬すぎる言葉で気になるところは自然な訳になっているようなので,けっこういいかもしれない。

 少しほかの本を読んだ後,通読してみようと思う。

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